■レボリューショナリーロード [2008 英米] ☆☆☆
「タイタニック」の3人をキャストに向かえたドラマ映画。
監督は、「アメリカン・ビューティー」のメンデス監督。
どうしても夫は妻よりも相手を少しだけ大事に想ってしまう傾向がある。
そんなリアルな夫のキャラクター構築がリアルで完璧に近い。
ディカプリオの演技も卓越している。
クライマックスのシーン等はもちろんだが、残業中に声を掛けてきた浮気相手を「なんだこいつ?」という目で見るときがまたスゴイ。
あんなに複雑な演技が出来る役者だったんだね、ディカプリオ。
その割に、アダルト・チルドレンぽい妻のキャラクターには不可解な点が多い。
ケイト・ウィンスレットの演技はスゴイものがあるが、シナリオ上のキャラクターの粗さでもったいないことになっている印象だ。
この映画には、多くの難点がある。
・子供達との関わり合い、視点が全く描かれていない。
子供がらみのエピソードは、こういったテーマの映画では、物語に厚みを与えるために必須のプロットであるのにも関わらず、だ。
・妻の「自分探しをしたい」という歪んだ性格のバックグラウンドが見えない。
通常、何か過去にトラウマ等がないと、こんなに「自分探し」に固執したりしない。
そのせいで、全体を通して妻の行動原理に納得がいかない部分が少しずつ残る印象となっている。
・いくつかの設定が不明瞭。
子供がいることが途中までわからなかったし、隣人夫婦ということも不明瞭。
あそこまでつきあいがあるという背景説明もない。
(最初に不動産屋の車で家を見に行くときに乳飲み子を抱えているとか、
隣人をもっとクローズアップするとか、いくらでも工夫は出来た。)
また、隣人夫婦の夫と妻の思わせぶりな表情や急激な感情変化などが、意図がよくわからない。
・妻の浮気のシーンが行為が今ひとつハッキリしない。
夫の浮気相手の取り扱いも、やや消化不良か。
・不動産屋の息子は、狂言回しとしてあからさますぎで興を削いでいる。
もう少し何とかならなかったのか。
全体のプロットを少し改良する事だけで不要になる、冗長な解説役だ。
全体を通して、ディカプリオと、ケイト・ウィンスレットの演技は出色の出来映えである。
そのおかげで、レベルの高いドラマに仕上がっている。
しかし、演技力の高い役者が良い仕事をしているのに、監督の能力がそれに到達していないのが残念な映画である。
そして、この映画では敢えて
キャシー・ベイツについて特筆したい。
「フライド・グリーン・トマト」他、演技の質は当代随一と行っても良いだろう、アメリカの大女優、キャシー・ベイツ。
この映画でもさすがの存在感である。
「タイタニック」での成金おばさんの雰囲気や、「しあわせの隠れ場所」でのかっちりとした行政官?役も、時間は短くとも味があった。
しかし、この役での彼女の出す「空気」は、すごいものがある。
少し頭が足りないが、営業職らしい弁舌や雰囲気を、わずかな表情や目線、手の使い方、ほんの僅かな姿勢やタイミングなどで表現してしまう。
しかも、エンディングで明らかにされるこの映画のテーマをも予感させる微妙な印象を、確実に観客に伝えている。
この演技は、キャシー・ベイツで無ければ、成し得なかったであろう。
「恐ろしい演技」
というものを見たのは、この映画が初めてかもしれない。
途中、シナリオ上、少し不可解なプロットもあるが、それでもこの役柄が果たすべきものを、たぶん監督の予想以上の完成度で表現している。
繰り返しになるが、この映画でのキャシー・ベイツの演技は「恐ろしい。」
これだけ、厚みと「含み」をもった演技をできる人は、他にいない。
彼女には、とてつもなく複雑で難しい役どころを、鬼のようにぶつけた映画を見てみたい衝動に駆られてしまう。
そういった監督が現れてこないだろうか。
そう言えば、メンデス監督はイギリス人とのこと。
この映画のじっとりとした展開や華の無さは国民性か。
「アメリカン・ビューティー」もそうだったが、監督の能力は高くないが、力のある役者に助けられている映画である。
メンデス監督は実は、主演のケイト・ウィンスレットの旦那さん。
そこでふと思った。
この映画は、二流監督の夫から、トップスターである妻・ケイトへの
「そこそこのシアワセでいいんじゃないの?」
という当てつけ(メッセージ)なのではないか?
そうであれば、妻のキャラクター表現がいい加減なのも(本人そのままだから敢えて表現する必要がない。)、行動が不可解なのも(本人達は「当然の行動」と感じるから、必要性の説明を怠りがちになる。)、うまく理解が出来る。
しかし、そこまで邪推するのは、さすがに穿ちすぎだろうか。
真相はわからないが。
『演技を見るためだけにお金を払っても良い、レアな映画』
【星の説明】
☆☆ 以上なら見ても損は無いでしょう。
☆☆☆☆☆☆ |
神!! |
☆☆☆☆☆ |
UNBELIEVABLE!! ベスト映画! |
☆☆☆☆ |
素晴らしい!ぜひ皆に勧めよう |
☆☆☆ |
面白い。見ましょう。 |
☆☆ |
なかなか面白い。 |
☆ |
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- |
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× |
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×× |
超クソ映画。 |
××× |
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×××× |
お前に映画を作る権利はない。 |
××××× |
もはや言葉にできない。 |
×××××× |
悪魔!! |
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